メトロ写真教室

第54回メトロ写真教室 皇居東御苑

2024年5月26日 (日) に第54回メトロ写真教室を開催いたしました。
午前中はプロの写真家による講義を行い午後は撮影地の皇居東御苑にて撮影会を行いました。
ご参加いただきました皆様が撮影された作品に写真家 中谷氏の講評を添えて掲載いたします。

総評 写真家 中谷 吉隆氏

第54回メトロ写真教室は、参加人数を小人数に絞り、安全・安心に十分な注意を払い行われました。
午前中は教室で、参加者から提出されていた作品の個評を行いました。続き今回の撮影地の皇居東御苑のロケハン写真をもとに紹介した後、写真の基礎的なこと、撮影の技術的なことなどを、私の作品を投影して講義を行い、現地へ向かいました。
皇居東御苑は、旧江戸城本丸、二の丸、三の丸の一部が皇居付属の庭園として整備され、公開されているところです。お堀にかかる竹橋から北桔橋門(きたはねばしもん)を通り東御苑へと入りました。来園者の多くは外国人観光客で、やはり日本の皇室関係への関心度高いようです。
目前に大きな石組の天守台が迫ります。本丸は存在せず幻の天守閣と言われています。天守台上からの光景は、眼下に大奥跡、本丸大芝生の二つの大きな広場が広がり、その背景には日本のビジネス街を象徴する高層ビルが、庭園を囲む立派な樹木の上に建ち並びコントラストを作り上げています。
汐見坂を下り、都道府県からの木々がある雑木林を抜け、二の丸庭園を回りました。二の丸池には見事な大きい尾びれを持つ色とりどりの鯉が泳いでいます。菖蒲田には花が咲き誇っていました。茶屋の歴史や優美さにもふれながら三々五々と撮影を楽しみ、出口の大手門へと向かいました。
途中では撮影に関するさまざまな質問にもお答えしました。
撮影後には、ご希望の方のカメラの液晶画面で画像を見ながら個評をして、無事写真教室を終えました。
参加者からの提出作品はバラエティーに富み、タイトルに作者の感覚が表れた作品があり、素晴らしいものでした。その中から一人一点を選び、講評を付けて発表します。

審査員の詳細はこちら
「東京砂漠のピラミッド」

浅海 竜太郎

審査員の個評

旧江戸城の本丸として石垣だけが残る天守台。そびえる一本の松が、あたかも天守閣のようにも見えます。行き交う観光客との対比で、その大きさが分かりますが、これをピラミッドと見立てたところがいい感覚で見事な作品となりました。

「静寂の砂 都心の影」

川崎 潤

審査員の個評

天守台の上から庭園を眺めた光景。芝生地は手前が大奥跡、奥が本丸芝生で、樹木の上には丸の内の高層ビル群がそびえています。ゆったりと広々とした空間は、静寂に包まれているようです。歩く二人をポイントにして決まりました。

「鯉を撮る中谷吉隆氏」

小暮 葉子

審査員の個評

この日、作者から「今日は先生を狙います」と宣言され、その通り応募作3点とも私が被写体でした。これは、二の丸池を泳ぐ鯉を撮っている姿で、画面の中の鯉の位置もよく決まっています。作者の、撮影の目的が叶った一枚だと思います。
この時、私が撮った鯉を題材として、フォト俳句作品にしましたので、別掲でどうぞ。

「皇居の静けさ」

小杉 瑛太

審査員の個評

整備された庭園は、都心にあって自然の宝庫と言えます。樹木の空間の小さな花が咲く原っぱで、一休みするこの鳥にとっては楽園でしょう。静けさが支配する雰囲気が捉えられていて、作者もこの鳥と共に時を過ごしたことと思います。

「白き鯉」

今野 瑞穂

審査員の個評

二の丸の池には普通の鯉のひれよりも長い色とりどりの鯉が悠然と泳いでいます。その内の、白い鯉に焦点を定めて、緑の水草との構図です。尾びれの揺れ方が決まっていて、一服の絵を観るようですが、シャッターチャンスの勝利です。

「サンシャイン」

島津 陽介

審査員の個評

数々の樹木に囲まれた庭園。うっそうとした樹木の森ではなく、雑木林の間から漏れてくる太陽の光を捉えての一枚です。この時期ではないと得られない太陽の角度が使われています。厳かな空気感もあるようで、いいショットとなりました。

「夏の訪れ」

陣ヶ尾 学

審査員の個評

庭園内をゆっくりと散策して、周辺の光景に目を配って捉えた一枚でしょう。新緑の葉に体を休める糸トンボに出会い、夏の訪れを感じたようで、アップでの撮影も見事に決まっています。この姿が、あたかも作者の化身のようにも見受けられます。

「導き」

杉田 のぞみ

審査員の個評

天守台の上に設置されていた方向指示の標識でしょうか。「北」の文字に迫ってのショットは見応えがあります。画面の省略がものを言っています。タイトルも何かを暗示させていて引き付けられます。感覚が発揮された見事な作品です。

「渾淆」

高梨 智弘

審査員の個評

大手門の出入り口である門の前には、ビジネス街の高層ビル群が迫ります。門の屋根とビルとのコントラストに魅せられた二人は、その情景をスマホで狙っています。作者は人物、門、ビルとの組み合わせで、構図も決まった一枚を得ました。

「江戸城天守台とあじさい」

古澤 浩之

審査員の個評

時期として、庭園内には紫陽花やつつじ、花菖蒲などが咲き乱れていました。その紫陽花と天守台の石垣を組み合わせての一枚です。柔らかさと硬いものの対比がいいイメージです。これからもこの対比の感覚を忘れずに大切にしましょう。

「都会の蜜源」

村越 恵理

審査員の個評

自然が生かされた大庭園の中には、数々の植物が生息しています。そういった処に、鳥たちをはじめ小動物が集まっているようです。蜜を吸う蜂もその仲間です。花畑の後方にビル群がそびえていて、実にダイナミックな構図の作品で見事です。

「古のライオン」

山本 直子

審査員の個評

こまごまとデザインが施された立派な電燈が展示されていました。その昔、皇居正門石橋に取り付けられていた飾電燈です。下部にライオンが、しっかりと爪を立ててこの電燈を支えています。そのライオンに注目してのショットです。

「ひっそりひかる」

和田 敏宏

審査員の個評

伐採された太い樹木の古い切り株に、猿の腰掛のようなキノコが芽生えています。しかも、そのキノコだけに日が差し込んでいて、森の中のスターのように輝いています。深い森が続く庭園の歴史を感じさせる、重みのある作品となりました。

「フォト俳句」

中谷吉隆(俳号・龍子)

このフォト俳句作品は、当日の二の丸池を泳ぐ、特徴のある大きな尾びれを狙っての一枚です。「逃げた鯉」を「失った恋」に重ねての、やや駄洒落的ですが、こんな遊び感覚を楽しめるのもフォト俳句です。

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