メトロ文学館

2026年【第42回受賞作品】

電車内で、文化的な雰囲気と潤いを感じていただくため、「東京で感じるあなたの心」をテーマに詩を募集いたしました。ご応募いただいた作品の中から、優秀作品を電車内のポスターとして掲出(期間限定)するとともに、優秀作品及び入選作品※をご紹介いたします。
※入選作品は期間限定でのご紹介となります。予めご了承ください。

【審査員選考記】

審査員 詩人・エッセイスト 白石 公子 氏 しらいし こうこ

一期一会のやさしさ 

 2026年、新しい年を迎えるとともにここに「第42メトロ文学館」が開催される運びとなりました。今回は東京内外から全389編の応募総数がありました。たくさんの心に残る作品を応募して下さり、ありがとうございました。
  みなさんの作品は、新たな気づきを与えてくれるもの、思わず深く頷いてしまうもの、新鮮な驚きをもたらしてくれるもの、目頭が熱くなるもの等など――毎度のことながら読み入り、しみじみと感じ入ってしまい、その選考にはかなりの時間を要しました。
 私たちの日常において、言葉に残すべきことがまだまだこんなにたくさんある、と感心、感動せずにはいられませんでした。
 この一瞬一瞬が、かけがいのないもの、刻一刻と変わっていく季節の移ろいなか、絶えず揺れ続ける今の心象風景など、書くべきこと、描かれるべきことが無尽蔵にある、と思うことはうれしいことでした。それは「メトロ文学館」の未知なる可能性であり、希望そのものだからです。
 今回、印象的だったのは、〈好きな場所〉〈忘れられない風景〉、つまりは「わが心の風景」を持つことでその人生がより豊かになる、ということです。心が弱くなったとき、その風景と対峙することで慰められ、癒され、励まされることもあるでしょう。新たな一歩が踏み出せる、そんな「わが心の風景」がありましたらぜひともエピソードとともに「メトロ文学館」に詩作品をお寄せください。

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【第42回優秀作品】

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「さくら落ち葉」

清水 千恵

紅葉した桜並木とこれまでの人生を重ね「落ち葉の道はやがて/花の道へと変わる」春、満開の桜並木を想像させるラストが見事。

「ミカンと空」

小野 光子

苦楽を共にしたご夫婦だからこそ見ることのできる清々しい風景、塩むすびとお茶の味わい深さ。冬の空に熟したミカン色が鮮やか。

「晩秋」

永井 多紀子

もしかしたら紅葉に色づく「美しい東京の冬のはじまり」に毎年に驚き、感動するために毎年忘れてしまっているのかもしれません。

「打ちっぱなす」

遠藤 玲奈

毎日ぼんやり眺める車窓の光景のなかに、何かを変えるヒントがあるのかもしれません。映画「Shall we ダンス?」の始まりのように。

「生きがい」

神戸 ひろみ

長年勤め上げた人ならではの言葉の重み、真実味と説得力があり、働くことと「生きがい」について示唆と励ましを与えてくれます。

「夕方の窓の中で」

成田 悠二

東京・人ごみのなかだからこそ感じられる心温まる小さな優しいシーン。それをこっそり見届ける側でいたいと思わせてくれます。

【第42回入選作品】

「奇跡中の奇跡」

松金 千鶴子

一生に一度こんな「奇跡中の奇跡」体験の歓喜と命が漲る瞬間は人生の支えになるはず。

「雪の空から」

鶴島 松良

病院の開けた窓からの鈴の音「シャンシャンシャン」のなんという清らかな響きと祈り。

「病院の花火」

加藤 且行

患者さんたちと一緒に「皆、静かに見守った」隅田川の花火。それぞれに去来する思い。

「思い出」

由井 あづさ

好きな人がいるバイト仲間と駅まで一緒に歩く楽しいひとときのシーンが胸アツの青春。

「東京タワー」

金子 修

確かに「東京タワー」を近くに見たとき、こんな不思議な遠近感・幻惑感に包まれます。

「はじまり」

植田 郁男

刻一刻と変わる始発の情景を丁寧に描写。「さあ、行こうか」が背中を押してくれます。

「ふるさとめぐり」

狩野 正昭

電車を乗り継ぎ、東京ならではのアンテナショップめぐりの楽しみ方を教えてくれます。

「あなたとの思い出」

長嶋 聡子

恋愛のはじまり「見えない磁石のように引き寄せられる」二人の世界の思い出が切ない。

「三歳の散歩道」

佐久間 恵美

全身で世界を受け止める「三歳の散歩道」。最高の自由と歓喜と未来を見守る母の眼差し。

「いつもの私 いつものコロッケ」

清水 祐子

「カッコをつけても カッコはつかない」ありのままの自分と向き合う東京の一人暮らし。

「小さな悟り」

山崎 風詩

一斉に飛び立った鳩たちが冬の青空に吸い込まれる様子に私たちも何かがふっきれます。

「レインボーブリッジ」

松田 かな子

「わが子と歩み 必死に走ったあの日々」が報われるようなレインボーブリッジの輝き。

「「期間限定」通勤」

藤戸 文子

初孫がもたらしてくれた新たな世界で知る人とのつながり。日々は豊かに彩られます。

「僕の好きな景色」

髙嶋 諒汰

好きな景色を前にして心の靄が晴れ、明日へと背中を押されていく清々しい心象風景。

「エール」

西山 美緒

父親のエールがそのまま読み手を励まし、ぜひ「この景色」を見てみたいと思いました。

「朝の勇者たち」

山本 嘉紀

朝、車両の人々を「今日を笑顔で戦うワンチーム」という感覚が勇気を与えてくれます。

「羽田展望デッキから」

品川 陽子

この滑走路をずっと眺めていたい、たなびいていく想念をたどっていたいと思いました。

「編み物」

秋山 茜

やり直しの勇気と余裕、地味な積み重ねが最強なこと。編み物が教えてくれる人生訓。

「やられた!」

山寺 順子

うなだれ枯れた向日葵の真の姿。「やられた!」とモロ手をあげる降参感がうれしい。

「化けて混ざらん」

横井 佳奈

五感を研ぎ澄まることで浮足立つ「妖怪も人も神様も/化けて混ざってほうづき市」。