メトロ文学館

2026年【第43回受賞作品】

電車内で、文化的な雰囲気と潤いを感じていただくため、「東京で感じるあなたの心」をテーマに詩を募集いたしました。ご応募いただいた作品の中から、優秀作品を電車内のポスターとして掲出(期間限定)するとともに、優秀作品及び入選作品※をご紹介いたします。
※入選作品は期間限定でのご紹介となります。予めご了承ください。

【審査員選考記】

審査員 詩人・エッセイスト 白石 公子 氏 しらいし こうこ

「メトロ文学館」ならではの作品群 

 みなさまのおかげを持ちまして、ここに2026年、夏「第43回 メトロ文学館」が開催される運びとなりました。東京内外から全336編の応募作品が集まりました。いつもより若干少なめではありましたが、多くの心温まる作品をお寄せ下さり、ありがとうございます。
 今回も、思わず深く頷いてしまうもの、新鮮な驚きと発見を与えてくれるもの、心打ち震えるもの、目頭が熱くなるもの、豊かな示唆に富んだもの、昭和を思い出してしまうもの等、ワクワクしながら読みました。
 なかでも印象的だったのは電車で遭遇した一期一会の出来事、奇跡的瞬間、車内、目の前でくり広げられる静かな「優しいやりとり」、席の譲り合いにおける気遣いと葛藤と恥じらい――、それらは日本人らしい電車・地下鉄マナー文化に基づくシーンの数々です。この静かな「優しいやりとり」は、自分も見たことがあるかもしれない、と思わせてくれるものでした。ただ、当たり前のことになっていて、日々のあわただしさ紛れて、すぐに忘れてしまっているのでしょう。しかしそれを見た瞬間、心がぱっと明るくなっていること、頑張ってみようと、心が切り替わるきっかけになっていた、ということにも気づかされました。
 これらの愛すべき詩は「メトロ文学館」ならではの佳品、ここでしか読むことのできないものです。改めて「メトロ文学館」が、長年にわたり作品をお寄せ下さるみなさまによって支えられていること再確認した選考でした。

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【第43回優秀作品】

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「取り残された約束」

菊池 竜治

娘を持つ父親の誰もが過ぎ去ってしまってから気づく「娘といられる時間に限りがある」こと。パンダへの思いも共感させられました。

「夜風」

上原 梨花

苦難や悲しみを乗り越えた夫婦がたどり着いた言葉と景色。すべてが思いやりに満ち、ろ過された美しい水のように心に沁みます。

「遠い君へ」

横井 佳奈

私たちはひとり自然と向き合っているとき、こんなふうに「遠い君へ」話しかけていることに気づかされました。自分を励ますように。

「地上へ」

田中 康士郎

「小さな手つき」の大きな優しさ。地下に春が灯るような温かいしぐさ。それを感受する者の背中を押してくれることが伝わります。

「時の交差点」

山本 嘉紀

かつての娘とすれ違ったかのような奇跡的瞬間、過去と現在、光と闇が交錯する夢のようなシーンを幻想的かつ鮮烈に描いています。

「F100号」

浅野 麻紀子

冬の車内、大きな額縁を抱えて乗り込んでくる様子を鮮やかに描写。自分も遭遇したかのように想像力が明るい方へと導かれていく。

【第43回入選作品】

「耳の公園」

奥野 正幸

都心の公園の独特な空気感。喧噪を包み込むサックスの音色に耳を澄まして読みました。

「山手線が見える高校で」

岩野 節男

町の名前で友人たちの顔が浮かぶという東京の高校出身者ならではの青春が新鮮で羨望。

「揺れる川面」

池田 淳二

車窓に流れる風景は時に揺れる心象風景と重なり、私たちに答えを導き出してくれます。

「絵画の窓」

岩本 遥

自分を愛し抜くことのなんという幸福感と充足感。エネルギーが満ちてきて光の方へ。

「地下でやわらぐ理由」

八巻 孝之

「地下」がもたらしてくれる輪郭がほどけてやわらぐ感覚。深層に触れているのでしょう。

「東京メトロで」

鶴島 松良

東京メトロならではの一期一会は「記憶の中の陽だまり」として生きる喜びになります。

「手帳」

広瀬 ひとみ

深く頷かされました。新しい手帳を買い、書き込むときのあの気持ちは希望そのもの。

「初夏のきらめき」

河内 渉

自転車をこぐ息子が光をはねながら遠ざかっていく後ろ姿。一瞬のきらめきが永遠に。

「伝言板」

中川 勉

短い言葉に物語が凝縮されていた駅の伝言版。昭和の青春ドラマの一コマのようです。

「月の居場所」

国広 知恵子

タワーマンションの間に浮かぶ細い三日月の儚くも美しい東京夜景はまるで影絵のよう。

「アメ横」

溝添 麻里

インバウンドにより今までとは一味違う異国情緒漂う新しいアメ横を教えてくれます。

「空き地の力」

橘 一洋

空き地を前にした時なぜか心がざわつき、立ち止まりたくなるわけが描かれています。

「ともしび」

長岡 りさ子

電車ならではの「名もなき優しさ」のエピソードがいい。見届けようとしている眼差し。

「修学旅行」

大江 豊

東京で修学旅行中の学生たちに遭遇するとき、自分の修学旅行と重ねてしまいますね。

「平和の炎は今日も心に」

木野田 博彦

戦前戦中戦後の東京を見てきた父親の言葉が心に響く。改めて考えさせられる「平和」。

「無意識?」

遊佐 亜紗子

行きは子どもと一緒、帰りはひとり。この往復中いろんな想いと戯れているのでしょう。

「おじいちゃん」

畠山 泰輔

カードが隙間に消えた瞬間、声が出てしまいました。おじいちゃんの笑顔に救われます。

「指の小舟を浮かべて」

豊田 良順

「指の小舟を浮かべて」の車内読書。心地よい波の揺れとほおずきの匂いに包まれていく。

「絵はがき」

八尋 一宇

絵はがきにまつわる「手書き」「ひと手間」「届くまでの時間」「体温」すべてが愛おしい。

「妊産婦手帳」

原岡 望

「母子健康手帳」の前身である「妊産婦手帳」の様子。時代が偲ばれる興味深く貴重な作品。